システム開発を外注する際、場合によっては着手金を支払うことになります。
本記事では、システム開発における着手金の概要や意義、支払うメリット・デメリットをご紹介します。さらに、着手金を支払う際にチェックしておきたいポイントも解説しています。着手金の必要性を理解したうえで、システム開発の依頼へ臨みましょう。
目次
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システム開発における着手金とは
システム開発における着手金とは、その名のとおりシステム開発へ取り掛かる前に支払う資金のことです。開発会社や開発期間、システムの規模などにより相場は異なりますが、開発全体にかかる費用の3~5割程度が相場です。勘定科目上では、「前受金」として処理されます。システム開発では、開発会社が発注会社からの着手金を受け取ることで、開発が本格的にスタートするというケースがみられます。システム開発やホームページ製作といったIT分野のシーンだけでなく、家を建てる際や弁護士を雇う際の関連費用としても取り入れられています。
システム開発には、人件費や設備費などさまざまな費用がかかります。例えば、初級レベルのシステムエンジニア1人の単価は60~100万円程度、経験豊富な上級システムエンジニアの単価は100~160万円程度と考えられています。こうした費用に着手金を充当するというケースは少なくありません。
着手金の支払いがない場合、人件費をはじめとした開発費用は全て開発会社の持ち出しとなります。システムの規模や開発期間によっては費用が捻出できなくなり、プロジェクトそのものが頓挫してしまう可能性も考えられるのです。着手金は、資金不足によってプロジェクトが頓挫しないように支払うものといえます。また、着手金がないことで金銭的な影響力や強制力が生まれにくくなります。その結果、突然の受注キャンセルや成果物の品質低下などのトラブルへ発展することも考えられるのです。
●企業によって扱いが異なる着手金
着手金の扱いは、企業によって細かな違いがあります。例えば、予算が限られているフリーランスのエンジニアや中小規模の開発会社は、資金確保のために着手金を設定しているケースが少なくありません。支払うタイミングや返金の条件にも違いがあるため、契約時にはそれらの相違点をしっかりと把握しておきましょう。例えば、着手金を支払うタイミングとして一般的なのは、契約が確定したタイミングです。以下のシステム開発の一般的な流れも参考にしてください。
- ヒアリング
- 各種見積もり
- 契約
- 要件定義
- 外部設計
- 内部設計
- コーディング
- 各種テスト
- システム公開・リリース
- 運用保守
着手金を支払うことで、契約が正式に成立したものとみなされます。返還に関しては、「システム開発費用を一括で受け取った後、システム完成後に着手金分を返還する」という企業もあれば、システム完成時に着手金分の金額を相殺し、改めて最終的な金額を出すというパターンもあります。
●着手金が必要ないケースもある
システム開発において、着手金は必ず必要となるわけではありません。例えば、「以前にも開発を依頼したことがあり、すでに信頼関係を構築できている」というケースでは、着手金が不要となることがあります。信頼関係があるからといって必ずしも着手金が不要になるとは限りませんが、費用に関する相談がしやすくなるのは確かでしょう。
また、システム開発の期間が短い場合も着手金は不要となるケースがほとんどです。短期間の開発であれば、システム納品後に開発代金を一括払いする形となります。
システム開発で着手金を支払うメリットとデメリット
システム開発において、着手金を用意するメリット・デメリットをご紹介します。着手金によって期待できる効果や、起こり得る問題について知っておき、開発を依頼しましょう。
●メリット1:開発会社との信頼関係を結ぶ
開発費用の3~5割ほどの着手金を支払うことで、「支払いをしてくれるクライアントだ」という安心感を開発会社に持ってもらえます。システム開発では、料金の支払いに関するトラブルが発生することもあります。料金関連のトラブルは適切な契約を締結しておけば避けられるものですが、それでも開発会社にとって大きな懸念点です。着手金の支払いを行うことで、開発会社の不安はある程度和らぐでしょう。
くわえて、システム開発会社は資金の心配をすることなく開発へ専念できます。同時に、「発注したい」という強い意思や熱意をアピールできるのもポイントです。「開発会社に丸投げせず、積極的にプロジェクトへ参加してくれそう」という信頼感を持ってもらいやすくなります。システム開発を成功させるためには、開発会社と発注会社が同じ温度感を持ってプロジェクトを進めることが大切です。着手金は、プロジェクトに対する温度感をアピールする手段だといえます。
●メリット2:プロジェクトスタートの合図となる
着手金を支払うことで、開発会社と発注会社の双方の合意が確定します。ここからシステム開発が本格的にスタートすると考えて良いでしょう。「プロジェクトが始まったのに、開発がなかなか進まない」というトラブルも防げます。無用なトラブルを防ぐためにも、入金のタイミングや金額に関する重要事項は、契約書へ詳細に記載しておくことが大切です。
●メリット3:開発会社に対する発言力を強められる
着手金を支払うことで、プロジェクトに対する熱意やシステム開発会社への信頼を示せます。金銭的なやり取りを経ることで、結果として対等な立場へ立てるようになり、意見や要望もある程度出しやすくなるでしょう。
また、開発会社からすれば「着手金が支払われているのに作業が進んでいない」「お客様の意見を汲み取れていない」という印象がつくことは避けたいものです。
ある程度の金銭的負担を負うことで開発会社に対する影響力が強まり、開発会社の作業に対する責任感やモチベーションも高められる可能性があります。
●デメリット1:一時的な経済負担がかかる
システム開発を外注する際は、自社の課題を洗い出したり、自社内で関連チームを編成したりさまざまな準備が必要となります。システム開発前の忙しいタイミングで、一時的とはいえ費用負担が増えてしまうのは考えものです。「費用をできる限り抑えたい」と考えている発注会社にとっては、着手金が思わぬ制約になってしまうこともあるでしょう。着手金の相場や適切な価格を事前に把握し、慎重に予算計画を立てることが大切です。
●デメリット2:着手金が返還されないトラブルが起こる可能性
「何らかのトラブルによってプロジェクトが頓挫した」「やむを得ず契約を途中解約しなくてはならない」といった問題が発生した場合、着手金は契約に沿って返還されます。しかし、返還に関する契約が曖昧だと、依頼会社と開発会社の間でトラブルが起こる可能性があります。例えば、以下のようなケースです。
トラブルの内容 | 詳細 |
---|---|
着手金の返還がされない | 1.システム開発を依頼した後、成果物の進捗を確認 2.成果物の質が低く途中解約を検討 3.システム開発会社へ着手金の一部返還を求める 4.システム開発会社は返金に応じずトラブルへ発展 |
双方の意見がぶつかり合った結果、予想以上に大きな事態へ発展することも珍しくありません。信頼のおけるシステム開発会社を選定することはもちろんですが、着手金に関する契約内容は細かく決めておくべきです。
●デメリット3:確認事項が増えやり取りが滞りやすくなる
着手金に関するトラブルを避けるためには、支払い金額や入金スケジュール、支払い方法などを明確にしておくべきです。双方の確認事項が増え、やり取りが滞ることもあるでしょう。しかし、後々のトラブルを防ぐためにも着手金の扱いを決めることは大切です。十分な確認時間を確保できるよう、できる限り余裕をもったスケジュールを設定しましょう。
着手金の支払い前に留意しておくべきポイント
着手金を支払う前には、以下のポイントを把握しておきましょう。
●費用相場と照らし合わせる
提示された着手金と費用相場を照らし合わせて、金額が妥当なものか否かを確認しましょう。この時、複数のシステム開発会社から相見積もりを取ることで大まかな費用感を掴みやすくなり、「着手金が安い・高い」という比較が行えます。ですが、相見積もりは費用の妥当性や大まかな相場をチェックするに留めましょう。
ただし、相場と比較して極端に安い金額を提示しているシステム開発会社には注意が必要です。エンジニアの技術にムラがあったり、予想外の追加費用が必要となる可能性があります。企業の公式サイトに開発実績や成果物などが公開されているのであれば、品質チェックの参考に使えるでしょう。
また、システムの開発期間から金額の妥当性を考える方法もあります。開発期間が数ヶ月単位であれば、全体費用の3~5割程度が相場ですが、年単位の開発では着手金を抑えて代わりに中間金を用意する、というケースもあります。
●契約書に着手金の扱いに関する内容を盛り込む
契約書には、着手金に関する確認事項を盛り込みましょう。着手金の扱いが明確になれば、双方の認識の齟齬を防げます。万が一トラブルが発生しても、契約書に沿って対応を検討できます。
具体的に盛り込む内容としては、以下のような項目が挙げられます。双方で話し合い、契約書へ明記しましょう。
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着手金の金額
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着手金の支払い対象となる作業
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入金のスケジュールや支払い期日
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支払いの方法(一括・分割など)
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トラブル発生時の対応方法
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返金ポリシー
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追加の支払い条件
金額や入金スケジュール、返金ポリシーはもちろんですが、支払い対象となる作業について明記することも大切です。何の作業に対して支払う着手金なのかが曖昧だと、開発会社側が「どこからどこまでが着手金の対象かわからない」と混乱します。同時に、発注会社も「どの作業にどれだけの着手金を支払ったか判然としない」という状況になってしまいます。
返金ポリシーやトラブル対応時の項目については、途中解約やプロジェクト停止時の対応を記載すると良いです。また、「判断に迷った際は、法的知識のある第三者へ相談する」という旨を記載するのも良いでしょう。
●法的な助言を受けることも検討する
システム開発では、着手金をはじめ費用の支払いに関するトラブルが発生しやすいものです。当事者だけでは解決が難しい事態へ発展することも考えられるでしょう。そこで、IT法務の知識が豊富な第三者に相談するのも手です。具体的な相談先としては、弁護士やITコンサルタントなどが挙げられます。IT法務を得意分野とする行政書士に、契約書へ盛り込む内容を相談することも可能です。法的な知識のある第三者の協力を得られれば、よりフェアな取引が行えるでしょう。
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