システム開発における「見積」とは、端的に言えば契約に必要な経費や取引条件などをまとめることです。開発だけに限らず、ビジネスにおいては契約の前段階で「見積を算出した後に契約を検討する」というケースも珍しくありません。
システム開発の見積を出す際に「算出方法が分からない」、「どのようなポイントを見ればいいの?」という方は多いのではないでしょうか。ここでは見積のとり方を知りたい方へ向け、システム開発における見積の算出方法から、見積を依頼する際のポイント、失敗しないためのコツを詳しくご紹介します。
目次
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システム開発で見積書を出す前に知っておきたいこと
見積書とは、その名の通り「見積の詳細が書かれた書類」ですが、システム開発の見積書には、見積の項目や算出方法がたくさんあります。
これは、システム開発にはさまざまな開発方法や作業工程があるためです。開発方法や工程ごとに見積の内容が複雑化しやすくなります。同じシステムの開発を依頼しても、開発会社によって算出される金額が変わるケースも少なくありません。また開発会社によっては、エンジニアの人数やスキル、下請けの有無などが大きく異なり、見積の内容も企業ごとに変化してしまうのです。
そのため、見積書を出す際は業界の基本的な知識や、金額相場を知っておくのも良いでしょう。これらの知識があるだけで、大まかな指標になって見積の比較検討がしやすくなります。また、見積に大きな金額差が出るのであれば、その根拠や内訳を企業に提示してもらうことが大切です。
見積の算出方法
システム開発における見積の算出方法 | ||
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名称 | メリット | デメリット |
類推見積(トップダウン) | 正確性の高い見積を素早く算出できる | 類似事例がないと算出できない |
係数モデル(パラメトリック見積) | 知識や経験に左右されず数値を算出可能 | データとサンプルがないと精度が落ちる |
ボトムアップ(工数積上げ) | 開発工程や工数ごとに見積を算出しやすい | 大規模な開発案件には不向き |
プライスツーウィン法 | 設定した予算の過不足を防ぎやすい | 予算によっては品質に影響を受ける |
システム開発の見積を算出する方法は、大きく分けて4通りあります。以下では算出方法ごとの概要や特徴を紹介します。
●類推見積(トップダウン)
類推見積は、過去にあった類似プロジェクト事例を参考に、具体的な見積を算出する方法です。事例を参考にするため、ほかの方法よりもスピーディーに見積を出しやすくなっています。予想工数や費用に大きなズレが生じにくいため、正確性の高さにも秀でた方法です。ただし、「初めてシステム開発の見積を出す」というケースにおいては、そもそも類似事例を参考にできません。類推見積は、あくまで類似事例があって成り立つ算出方法だという点を覚えておきましょう。
●係数モデル(パラメトリック見積)
係数モデルとは、特定の数式モデルを使用して、各作業を数値化したうえで見積を算出する方法です。例えば、「製品Aを100個作る見積」を計算するケースの場合、過去のデータを参照に「製品Aを1個作るのにかかったコスト」を割り出します。仮に「1個500円のコストで製造できる」と判明すれば、「製品Aを100個作るコストは5万円」という見積を算出できるのです。
機械的・数学的な算出方法であるため、見積担当者の知識や経験に結果が左右されないというメリットがあります。反面、蓄積データやサンプル数への依存度が高いのも事実です。したがって、サンプル数が不十分だと、見積の精度が極端に下がってしまうという欠点があります。
●ボトムアップ(工数積上げ)
ボトムアップ見積は、プロジェクトで完成するシステムとその構成要素を想定し、見積を算出する方法です。作業1つひとつの工数をもとに見積を算出するため、抜け漏れが発生しにくいのが特徴です。ほかの方法と比べると、精度が高いという魅力もあります。しかし、システム完成までの工数が読みづらい大規模プロジェクトには不向きな方法です。
●プライスツーウィン法
プライスツーウィン法とは、クライアントの予算に合わせて見積を算出する方法です。予算をベースに見積もるため、予算の過不足を防げる利点があります。とくに予算を決めたうえで開発を依頼するケースにおいては、優れた方法と言えるでしょう。その一方、予算ありきの見積になるため、思わぬ機能不足が発生しやすいのも事実です。機能不足を補うべく二次開発や三次開発が必要となれば、結果的に追加コストがかかってしまいます。
以上、システム開発を担う企業に向けて、見積の算出方法について詳しく紹介しました。以下の項では、実際にシステム会社へ開発を依頼したい方に向けて、見積の対象となる項目や内容について詳しく解説をします。
見積の対象となる項目・内容
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要件定義費用
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設計費用
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UIデザイン費用
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進行管理費用
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開発費用
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導入費用
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導入支援費用
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購入費用
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旅費・交通費用
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保守費用
企業や開発案件によっては、項目が増減するケースもありますが、システム開発は上記の項目が見積の対象となります。以下で詳しく紹介しましょう。
●要件定義費用
要件定義とは、「どんなシステムがほしいのか」、「システム導入によってどんな課題を解決したいのか」という要望をまとめる作業です。要件定義費用は、システムの方針や大まかな仕様を決定する際に発生します。
●設計費用
サーバーをはじめとするインフラ整備や専門言語の検討など、設計環境を整えるために必要な費用です。
●UIデザイン費用
UIとは「ユーザーインターフェース」の略語で、ユーザーから見たシステム画面(外部デザイン)です。だれでも見やすく使いやすいデザインにするためには、十分なUIデザイン費を確保する必要があります。
●進行管理費用
進行管理費用とは、その名の通り作業スケジュールの管理や調整に必要な費用です。プロジェクト管理費やディレクション費と表記されるケースもあります。
●開発費用
開発費用は、開発に携わるエンジニアの技術費や人件費です。システム開発にかかる費用は、この開発費用(エンジニアの人件費)が大きなウェイトを占めています。
●導入費用
完成したシステムを導入する際は、さまざまな初期設定が必要となります。この初期設定をするのに必要な費用が、導入費用です。
●導入支援費用
システムをスムーズに利用できるよう、開発会社が操作マニュアルを作成したり操作方法の説明会を開催したりするケースがあります。そのケースで必要となるのが導入支援費用です。
●購入費用
システムを運用するにあたって、ソフトウェアの購入やサーバーの導入が必要になるケースがあります。購入費用は、こうした機材を購入するための費用です。
●旅費・交通費用
開発会社との打ち合わせにかかる費用が、旅費・交通費用に該当します。遠方の開発会社に依頼している場合は、宿泊費などもこちらに計上されます。
●保守費用
保守費用は完成したシステムのメンテナンスやバグの修正、機能の改修などに必要となる費用です。
以上の項目や内容を把握しておけば、システム開発を依頼した際に、「どこにどれだけのコストが発生するのか」がひと目で分かるようになります。「システム開発にかかる費用相場を教えて」という方であれば、以下のページをご参照ください。開発にかかる具体的な費用相場から、開発費を抑える方法などを詳しく紹介しています。
見積のチェックポイント
システム開発において、少しでも精度を高くするためのポイントを紹介します。見積時に意識しておきたいチェックポイントは、以下の通りです。
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作業範囲が明確になっているか
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作業で発生するリスクが含まれているか
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理工数が計上されているか
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調査・分析に必要な工数が含まれているか
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数字に妥当性があるか
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前提条件は明確になっているか
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必要なハードウェア、ソフトウェア購入金額が含まれているか
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責任範疇は明確になっているのか
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検収方法・検収条件は明確になっているか
●作業範囲が明確になっているか
システム開発は、複数のタスクの集合体です。見積を出す際は、タスク1つひとつが明確に提示されているかを確認しましょう。システム開発には「基本設計から運用・リリースまで」「要件定義から総合テストまで」などさまざまなパターンがあります。より正確な見積を算出するためには、どこからどこまでが依頼できる範囲なのかをしっかり把握しておく必要があるのです。
●作業で発生するリスクが含まれているか
システム開発では、修正や再開発が必要になるシーンも出てきます。こうしたトラブルが重なると工数も増え、それだけ費用が上乗せされてしまうのです。ある程度の修正費やトラブル対応費が見積に含まれているか否かを確認しておきましょう。
●管理工数が計上されているか
しっかりとした進捗管理や品質管理は、理想のシステムを作り上げるのに不可欠な作業です。見積には、これらの管理工数が計上されているか否かも確認しましょう。
●調査・分析に必要な工数が含まれているか
システムの設計や開発に必要な工数ばかりに配慮をすると、要件定義を作成するのに必要な事前調査や分析にかかる費用を疎かにしがちです。見積を出す際は、調査・分析に必要な工数も考慮してください。
●数字に妥当性があるか
見積で算出されたコストや工数に「不自然な箇所がないか」、「適切な数値であるか」という調査は不可欠です。項目ごとに「なぜその数値になるのか」という視点でチェックをしましょう。
●前提条件は明確になっているか
ここでいう前提条件とは、システムの対象範囲や開発言語のような使用技術になります。前提条件が明確でないと、見積で算出される数値の正確性に影響が出ることもしばしばです。
●必要なハードウェア、ソフトウェア購入金額が含まれているか
システム開発に必要なハードウェアやソフトウェアがある場合は、購入金額を見積に含まれているかを確認しましょう。
●責任範疇は明確になっているのか
どのような契約であっても、責任の所在が曖昧のままだとトラブルの火種となることも珍しくありません。見積の段階で、責任範囲の明確化しておくことを推奨します。
●検収方法・検収条件は明確になっているか
システムが「仕様通りに完成しているか」を判断するには、完成後の検収が不可欠です。見積には、完成したシステムの検収方法や検収条件が含まれているかを確認しましょう。
開発会社への見積依頼のポイント
開発会社へ見積を依頼する際は、複数の会社から見積をとるのが得策です。
できれば3社以上に見積を依頼し、検討材料を確保しましょう。複数社の見積を比較した時に、1社だけが極端に安い場合などは注意が必要です。追加費用で結果的にコストがかかることも多いほか、粗悪な品質の成果物が納品されたりするケースもあります。繰り返しになりますが、システム開発を依頼する際は大まかな費用相場を把握しておき、見積の妥当性をある程度判断できるようにしておくと良いでしょう。
見積の課題について
システム開発では、「見積を出しても結局想定外のコストがかかってしまった」というトラブルも少なくありません。現実的に起こりうるリスクを踏まえた見積を出してもらうことが大切です。このほか、見積で失敗しないためのポイントを以下でまとめています。
●前提条件を明確にする
見積を出す際は、開発会社側が、どんな制約事項・仕様をもとにして見積を行なっているのかを知っておきましょう。この事項は「前提条件」と呼ばれ、前提条件のすり合わせが不十分だと齟齬が発生します。そうならないためにも、前提条件をしっかりと可視化してもらうことが大切です。
●詳細な仕様を事前に話し合っておく
開発がスタートする前に、どのプログラム言語を使うのか、使用ハードウェアやソフトウェアは何にするかなど、細かい仕様についてすり合わせすることが重要です。仕様のすり合わせを怠ると、後になって「この部分はこうなると思っていた」という齟齬が発生します。
今回は、システム開発における見積の算出方法から、見積を依頼する際のポイントなどを詳しく紹介しました。初めて見積を出すケースの場合、「どこをチェックすればいいのか」とネガティブに構えてしまう方は少なくないでしょう。しかし、大まかな相場やいくつかのチェックポイントを把握しておけば、制度の高い見積同士を比較検討しやすくなるのです。
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