受け入れテスト(User Acceptance Test: UAT)は、システムやソフトウェアの最終段階で実施される重要な検証プロセスです。発注者や第三者が実際の運用環境でシステムをテストし、要件を満たしているか、不具合がないかを確認します。
本記事では、受け入れテストの概要と優先度付けの重要性、他のテストとの違いを解説します。さらに、効果的な受け入れテストの進め方についても紹介しますので、本記事を参考にしてスムーズなシステム導入に向けて準備しましょう。
目次
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受け入れテストとは?
ここでは、受け入れテストの概要や優先度を付けることの大切さについて解説します。
●リリース前に潜在的な問題を特定するために行う
受け入れテスト(User Acceptance Test)は「ユーザー受け入れテスト」や「検収テスト」、「承認テスト」とも呼ばれ、開発を依頼したシステムやソフトウェアに問題がないかを発注者が確認するテストです。
開発における最終工程にあり、開発側ではなく発注者(エンドユーザー)や、委託された第三者がテストを実施する特徴があります。
受け入れテストの主な目的は、開発されたシステムやソフトウェアが提示した要件を満たしているか・動作に不具合がないかの確認です。実際の運用環境でテストを実施し、実務上の使いにくさや不具合がないかをチェックします。
受け入れテストをすることによってソフトウェアの不具合や問題点をリリース前に修正できるため、完成後に発注者が使いにくさを感じるリスクを軽減できます。
●優先度の高い機能からテストすると効率的
受け入れテストでは、全てを同じ優先度でチェックするのではなく、ポイントを押さえて実施すると効率的です。ソフトウェアの主要部分や利用が多いと想定される機能は、そのほかの機能よりも優先してテストを行いましょう。
例えば、オンラインショップであればショップカートや支払いの機能が非常に重要です。カートに商品を一時保存できない、決済ができないといった不具合があるとユーザーにとってストレスであり、売上げに大きな悪影響があるため優先的にテストする必要があります。
また、受け入れテストではソフトウェアが正しい挙動をするかを確認するために、実環境と実データを用いることが大切です。テストで用いる環境やデータが実際の状況と異なる場合、リリースした後でテストでは確認されなかった不具合が生じる可能性があるためです。
実際の状況を想定し、優先度を付けてテストを実施することで、効率的に不具合や問題をリリース前に発見でき、修正・改善してブラッシュアップできます。
受け入れテストとほかのテストとの違い
ソフトウェアやシステムの開発プロセスには複数のテスト段階が含まれていますが、それぞれ目的や特徴が異なります。受け入れテスト、単体テスト、結合テストの特徴や違いについて紹介します。
●受け入れテストの特徴と目的
前述した内容をまとめると、受け入れテストの特徴と目的は以下の3点です。
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いつ:主に開発の最終段階
-
誰が:発注者や発注者が依頼した第三者
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何を:システムやソフトウェアが実際の運用環境で問題なく動作するか、要件に沿っているか
上記のポイントを押さえて、単体テストや結合テストとの違いを解説します。
●単体テストとの比較
単体テスト(ユニットテスト/コンポーネントテスト)とは、ソフトウェア開発の初期段階で行われるテストです。このテストでは、ソフトウェアを構成する最小単位(モジュールやコンポーネントなど)が、正常に動くかどうかをチェックします。具体的には、プログラムが正しい結果を出すか(正常系)、そして間違った情報が入力された場合に正しくエラーを表示するか(異常系)をチェックします。
開発の初期にこのテストを行う理由は、不具合を早期に発見して修正するためです。初期段階でテストを実施することによって多くのバグを解決できれば、後の開発プロセスがスムーズに進み、時間とコストの節約にもつながります。
受け入れテストと単体テストは、その目的と実施タイミングに大きな違いがあります。単体テストは、ソフトウェア開発の初期段階で実施され、ソフトウェアの各要素が正常に動作するかを確認するためのテストです。
一方で、受け入れテストは開発プロセスの最終段階にあり、ソフトウェアが発注者の要件・要望を満たしているかを確認するために実施されます。
●結合テストとの比較
結合テストは、複数のモジュールやシステムが互いに連携して正しく機能するかを確認するテストです。
先述した単体テストで各モジュールが独立して正常に作動することをチェックした後に、それらが連携しても問題なく動くかを確認するのが結合テストの役割です。
結合テストは、実際の運用環境をできるだけ再現した条件の下で行われます。システムが実際に稼動した時の動作を前もって確認し、見落とされがちな問題を早い段階で見つけるためです。
結合テストの種類としては以下のようなものがあります。
・インターフェーステスト
異なるモジュール間でのデータの送受信が適切に行われるかを検証するテストです。インターフェースの設計ミスや実装エラーがないか、データ形式やタイミングの誤りがないかなど、通信状態に焦点を当てて行われます。
・ブラックボックステスト
システムの内部構造を考慮せず、入力に対する出力のみをチェックします。これにより、ユーザー視点からシステムが仕様通りに機能しているかを確認します。
・業務シナリオテスト
実際の業務プロセスを模倣して、システムが業務要求を満たしているかを検証するテストです。通常の操作だけでなく、エラー処理や例外的な操作がシステムにどのような影響を及ぼすかも調べます。
・負荷テスト
システムに大量のデータやリクエストを送り、処理性能と耐久性をチェックします。システムが高負荷状態でも安定して動作するかを確認するために行います。
結合テストと受け入れテストは、テストをする際の目的やタイミング、実施者、実施環境が異なります。
結合テストは単体テストの後に行われ、システムの技術的な側面を開発側がチェックします。また、テスト環境は開発側の環境か、実環境にできるだけ寄せた状態で行います。
一方で、受け入れテストは開発の後期に実環境で実施され、使いやすさやシステムが要望に沿っているかを発注者がチェックするテストです。
このように、受け入れテスト、単体テスト、結合テストにはソフトウェア開発の工程において実施のタイミングや目的が異なります。
効果的な受け入れテストの進め方
ここでは、受け入れテストの進め方やポイントについて紹介します。
●1.テストの範囲を明確化する
まずは、受け入れテストの目的や範囲を関係者内で定義します。
・テストの目的と範囲の明確化
開発プロジェクトの初期段階では、どの機能がテストされるか、どのような結果が期待されるかを明確に定義します。
また、効率的にテストを実施するため、この段階でテストの優先順位をつけ、検証する範囲を適切に絞ることが重要です。
・関係者とテスト要件の合意
開発プロジェクトの関係者と話し合い、設定したテストの目的や範囲の同意を得ます。テストの要件を明確に提示することで、認識のズレを防ぎ、後々のトラブルになるリスクを軽減できます。
・テストスケジュールとリソースの割り当て
受け入れテストの実施に向けて、スケジュール計画とリソースの割り当てを行います。人員や時間、設備といったテストに必要なリソースを確保し、工数を適切に見繕ったスケジュールを設定することで、スムーズにテストを実施できます。
・テストシナリオとケースの作成
テストする対象を明確にしたテストシナリオと、それに沿ったテスト内容を明記した詳細なテストケースを作成します。正常な操作に対するテストだけでなく、エラーになった場合を想定したテストも含まれます。
●2.環境を整え検証する
テストの準備が整ったら、実際のテスト環境を構築し、計画通りにテストを実施します。
・テスト環境の準備と検証
実運用と同じか、できるだけ近い環境を用意し、テストに必要な全てのハードウェア、ソフトウェアが適切な状態であることを確認します。この段階で念入りにチェックしておくことで、後の工程で起きる不具合を未然に防ぎます。
・テストケースの実行と結果の記録
作成したテストケースを順に実行し、それぞれの結果を詳細に記録します。問題が発見された場合は、その内容と影響を詳しく記載します。
問題が発生した場合の原因特定につながるため、成功したテストと失敗したテスト、両方のデータを記録することが重要です。
・問題点の特定と修正の追跡
テスト中に発見された問題や不具合を特定し、開発チームに報告して修正を依頼します。修正が完了した後は再びテストを行い、問題が解決されているかを確認します。
・関係者へ結果の共有と承認の取得
テスト結果を全ての関係者に共有し、成果物が要件を満たしているか最終承認を得ます。また、テスト結果に基づく最終報告書も作成します。
●効果的に実施するためのポイント
受け入れテストを実施する際のポイントについて、ユーザーシナリオとコミュニケーションの2点から解説します。
ユーザーシナリオに基づいて実施する
受け入れテストを行う際は、ユーザーシナリオを基にしたテストを実施することが重要です。ここでいうユーザーシナリオとは、実際にシステムやソフトウェアを使用するユーザーが実務でどのように使うのかを具体的に想定した「流れ」です。
仕様上は完璧のように見えても、実際に使用してみて扱いにくかったり、実環境において不具合が生じたりする場合があります。
そのような事態を避けるために、日常的な操作からエラー、さらにはピーク時の負荷状態といったように、実際の使用で起こり得るさまざまなケースを想定したユーザーシナリオを作成し、それに基づいたテストを行うことが重要です。
また、開発プロジェクトを進行するにあたって定期的な進捗のレビューは欠かせません。テストが計画通りに進んでいるかを確認し、必要に応じて調整を行いましょう。
外注先とのコミュニケーションを図る
受け入れテストを外注している場合、報告や確認のコミュニケーションはテストの進捗や品質を維持するうえで大切です。外注先と密接に連携を取りながら、定期的にミーティングを行い、テストの要件や期待する成果について明確に伝えましょう。
テスト結果の透明性を高めるため、テストの実施内容は上手くいったケースだけでなく、問題があったケースについても発生した原因や対策、修正状況といった詳細な報告を求めることもポイントです。不具合をリリース前に修正することで質を高め、原因を把握しておくことで後に同じような事象が起きた時に備えることができます。
確認や報告漏れ、認識違いといったコミュニケーション不足による認識のすれ違いを避け、お互いにテストの目的を理解した状態がプロジェクトの進行をスムーズにします。
システム開発成功の秘訣:外注パートナーの選び方
受け入れテストは開発プロセスの最終段階で実施され、システムが要件や要望を満たしているかどうかの検証が目的です。このテストをスムーズに進行させるためには、技術的なスキル、業界経験、そして信頼性を備えた外注先を選ぶことが大切です。外注のメリットとしては専門知識を有していること、教育コストがかからないことなどが挙げられるでしょう。
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