
企業のデータは増え続け、止めないIT運用が求められています。データセンターは、サーバーやストレージ、ネットワーク機器を安全に動かすための専用施設です。電力・冷却・物理セキュリティ・災害対策を備え、自社では用意が難しい環境を提供します。本記事では、データセンターの役割と主要設備、オンプレミス・コロケーション・クラウド・エッジの違い、料金の考え方、選ぶ際のチェックポイントを順に解説します。
目次
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データセンターとは
企業が扱うデータは年々増え、止まらないIT運用が当たり前になりました。データセンターとは、サーバーやストレージ、ネットワーク機器を集約し、安全かつ安定して稼働させるために設計された専用施設です。電力・冷却・物理セキュリティ・災害対策までを備え、企業のIT基盤を支える“要”として機能します。自社で同等の設備を整えるのは負担が大きいため、アウトソースする選択が広がっています。ここからは役割や設備、種類、クラウドとの違いまで順に紹介します。
●データセンターの役割
データセンターの第一の役割は、企業が生成する膨大なデータを安全に保管し、バックアップと迅速な復旧を実現することです。日々の業務データから機密情報までを一元管理し、障害時のリカバリ体制を整えます。
次に、メールや会計などの基幹システム、ECやビッグデータ分析といったアプリケーションを安定稼働させる“土台”を提供します。安定した電力、温度・湿度の管理、高速なネットワークがパフォーマンスを支えます。
さらに、地震や台風、停電といった不測の事態でも事業を止めないための拠点として機能します。堅牢な建物と非常用電源により、オフィスが被災してもシステムを動かし続け、BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)における中核を担います。
●データセンターの主な設備
電源設備は“生命線”です。瞬断時にはUPS(Uninterruptible Power Supply/無停電電源装置)が即時に給電し、その間に自家発電機が起動して電力を引き継ぎます。大規模施設では72時間以上動かせる燃料を備蓄し、長期停電にも備えます。
空調・冷却では、CRAC(Computer Room Air Conditioner/コンピュータールーム専用空調)などで温度・湿度を一定に保ちます。ホットアイル/コールドアイルのレイアウトで排気と吸気を分離し、PUE(Power Usage Effectiveness/電力使用効率)の改善も図ります。
物理セキュリティは多層防御です。フェンスや常駐警備、監視カメラに加え、ICカードや暗証番号、生体認証の多要素認証を組み合わせます。サーバールームにはインターロック式ドア(マントラップ)を設け、共連れを防ぎます。
災害対策としては、耐震に加え免震構造を採用し、震度6強〜7クラスの揺れから精密機器を守ります。火災にはガス系消火設備を用いて機器へのダメージを抑えます。
データセンターの種類
データセンターは所有形態やサービスモデルで分類できます。自社の要件(コスト、自由度、運用体制)に合う形を選ぶことが、最終的な使い勝手を左右します。以下で代表的な4タイプを解説します。
●オンプレミス型
自社で専用施設を持ち、機器からネットワーク、セキュリティまで全てを自社方針で設計・運用する形態です。カスタマイズ性は非常に高い一方、建設・設備導入の初期投資(CapEx/Capital Expenditure)と、24時間運用の人件費や光熱費などの運用費(OpEx/Operational Expenditure)が重くなります。
●コロケーション型
事業者が用意したラックやケージを借り、自社所有のサーバー機器を設置します。電力・空調・セキュリティは事業者設備を利用しつつ、機器の設定や運用は自社で行えます。自前建設の負担を抑えつつ、管理権限を保てるバランスの良い選択肢です。
●クラウド型
AWS、Microsoft Azure、Google CloudなどのCSP(Cloud Service Provider/クラウドサービスプロバイダー)が運営する超大規模データセンターのリソースを、インターネット経由で利用します。物理機器の所有や保守は不要で、必要なときに必要な分だけ使える拡張性が魅力です。
●エッジ型
利用者やIoT機器の近くに小規模拠点を分散配置し、通信遅延を抑える形態です。自動運転、スマート工場、リアルタイムAI、遠隔医療などミリ秒単位の応答が必要な用途で有効です。世界市場は2025年に36兆円規模との予測もあり、存在感が高まっています。
データセンターとクラウドの違い
両者は密接に関連しますが、提供する“価値の単位”が異なります。ここではコロケーションを例に、違いを具体的に整理します。
●データセンターの特徴
データセンター(コロケーション)は、サーバーを置く物理的な“場所と設備”を提供します。ラック、安定電力、空調、物理セキュリティといった環境が対象で、機器の選定・購入・設定やOS、アプリの管理は利用者の責任です。その分、構成の自由度は大きくなります。
●クラウドの特徴
クラウドは仮想化された“ITリソース”をサービスとして提供します。物理機器は事業者が保有・運用し、利用者は管理画面から数クリックで仮想サーバーやストレージを調達・拡張できます。なお、クラウドも最終的にはデータセンター上で動作しており、物理リソースを仮想化してオンデマンド提供している点が本質です。
| 項目 | データセンター(コロケーション) | クラウド |
|---|---|---|
| 提供内容 | 物理スペース・電力・空調・物理セキュリティ | 仮想サーバーやストレージ等のITリソース |
| 機器の所有・管理 | 利用者 | 事業者 |
| 運用・保守 | 設備は事業者/機器は利用者 | 事業者が一括 |
| カスタマイズ性 | 非常に高い | 事業者メニューの範囲 |
| スケーラビリティ | 物理増設が必要 | 即時に増減可能 |
| 料金 | 主に月額固定(ラック等) | 主に従量課金 |
データセンターを利用するメリット
自社サーバールームと比べて、データセンターには多くの利点があります。ここでは代表的な5点を具体例とともに確認します。
●安定した電力と通信を確保できる
UPSや自家発電機の冗長化により、商用電源が止まってもシステムを継続稼働できます。さらに複数キャリアの回線を引き込む“キャリアニュートラル”な環境なら、片系障害時も別回線へ切替可能で、ネットワークの可用性を高められます。
●セキュリティ対策を強化できる
入退室管理、監視カメラ、生体認証などの多層防御で物理侵入を抑止します。ネットワーク面でも、ファイアウォールやIDS(Intrusion Detection System/不正侵入検知)・IPS(Intrusion Prevention System/不正侵入防御)、DDoS(Distributed Denial of Service/分散型サービス妨害)対策を展開しやすい環境が整います。
●災害リスクを低減できる
耐震・免震構造やガス系消火設備により、地震・火災から機器を守ります。加えて、遠隔地データセンターにバックアップを置けば、広域災害でも代替拠点で事業を継続しやすく、BCPに直結します。
●運用負担を軽減できる
専門スタッフが24時間365日で監視・保守を行います。リモートハンド(現地作業代行)を使えば、再起動やケーブル差し替えなどを依頼でき、移動コストと対応時間を削減できます。
●コストを抑えられる
無停電電源装置や発電機、専用空調、セキュリティシステムを自前で揃える初期投資は莫大です。データセンターなら月額利用へと変換でき、設備を多社で共有するスケールメリットでトータルコストが下がるケースも珍しくありません。
データセンターの料金体系
契約前に費用の内訳を把握しておくと、無駄のない構成を組みやすくなります。ここでは代表的な項目と目安を整理します。
- 初期費用:契約事務やラックへの設置工事費など。事業者やキャンペーンで無料になる場合もありますが、一般には数万円〜数十万円程度。
- 月額利用料(ラック利用料):1U(高さ約4.45cm)単位、1/4ラック、1/2ラック、フルラックなどのメニュー。例として、1/4ラックで月額5万円前後、フルラックで12万円以上が一般的です。
- 電力利用料:定額(例:3kVAまで込み)と従量課金の2タイプ。高密度構成では従量のほうが実態に合わせやすい場合があります。
- 回線使用料:ベストエフォート型は割安だが混雑時に低速化の可能性。帯域保証型は安定する代わりに高額で、例として100Mbps保証で月額35万円程度のケースがあります。
- オプション料金:運用監視、マネージドファイアウォール、IDS/IPS、DDoS対策、リモートハンドなど、必要に応じて追加します。
データセンターを選ぶ際のポイント
同じ“ラック”でも品質は大きく異なります。失敗を避けるために、次のポイントを現地見学で必ず確認しましょう。
- 立地:地震・洪水ハザードのリスクが低いか。本社と同時被災を避ける地理的分散も検討しましょう。
- 冗長構成:電源系統の多重化、UPSや自家発電の構成(N+1など)、燃料備蓄と補給体制。空調も1台故障時に冷却能力を維持できる設計かを確認します。
- セキュリティ体制:入退館の段階数、認証方式(ICカード/生体)、24時間の有人監視、有資格者の常駐状況、ISO 27001などの認証取得状況。
- 拡張性:空きラックや床荷重、電源容量の余裕。将来増設の柔軟性があるか。
- 見学対応:設備の清潔さ、運用の丁寧さ、スタッフの説明の明瞭さも判断材料になります。
データセンター活用でIT基盤を強化しよう
データセンターは、単なる“置き場所”ではありません。企業のデジタル資産を守り、継続性を確保し、運用を効率化する戦略的インフラです。オンプレミス、コロケーション、クラウド、エッジにはそれぞれ特徴があり、対立関係ではなく使い分けと組み合わせ(ハイブリッド)が鍵になります。
まずは自社の要件を整理しましょう。どのシステムに高いカスタマイズ性が必要か、どの業務はスケール優先か、災害耐性をどう確保するか――この“棚卸し”が選定の出発点です。次に、候補施設の見学と費用・体制の比較を行い、必要なら小さく始めて段階的に拡張してください。今日の検討が、明日の止まらないサービスにつながります。要件リストと見学候補を作成し、短期の比較表を準備して、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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